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My memories・・・思い出の一枚・・・《北島寿典》

チームメンバーそれぞれにもっとも思い出に残る1枚の写真について語ってもらう企画です。

第6回目の今回は、これまで故障が多くなかなか実力を発揮する機会が少なかったですが、今季は高いレベルで好調を維持している北島選手に語ってもらいました。

1992年8月17日  於:新潟県佐渡島の浜辺

この写真は僕が幼いころに、家族で佐渡島に旅行へ行ったときのものです。

おぼろげな記憶をたどると、海のない群馬県で育った僕にとってさぞ楽しい経験だった事でしょう。今となっては、佐渡の風光明媚な風景やそれまでに食べた事がなかったであろう新鮮な魚の味など、いつの間にか僕の記憶から薄れてしまいましたが、忘れてしまいたいこの時のある出来事だけは、今もはっきりと頭に焼き付いています。
 
 
幼かった僕は、初めての船旅に少々飽きていました。それを見かねた父が僕に自動販売機でコーラを買ってくるように使いを頼みました。仕事を頼まれたことで芽生えた使命感が、僕にそれまで感じたことがないような勇気と興奮をもたらしました。

すぐさまお金を手にし、コーラを求めて見知らぬフェリー船内の探索を開始しました。車も積み込む大きなフェリーの船内は、それまで持て余していた暇を一気に解消させるまさに、僕にとっての大冒険フィールドでした。

まず、最初に見つけた自動販売機では残念ながら、コーラが売られていません。
次に目指したのは、乗船の際に見かけた後部デッキ近くの自動販売機。
しかし、これもコーラはありませんでした。

あっちこっち夢中になって自動販売機を探していると、「まもなく佐渡島に到着いたします。」というアナウンスが聞こえてきて、次第に船内やデッキに人が少なくなってきました。
 
 
 「マズいっ!」
 
 
はっと我に返った僕は、自動販売機を探すことに夢中になり自分がどこにいるのか全くわからなくなっていました。
 
 
 「このまま船の中に取り残されて、どこか遠いところに連れていかれる・・・」
 
 
間違いなく「迷子」になったということを理解して感じたあの時の不安と恐怖は、忘れたくても忘れられない苦い思い出として記憶に残っています。結局最後は親に見つけ出してもらい事なきを得たのですが、案の定帰りのフェリーでは親の近くを絶対に離れようとしなかったのは言うまでもありません。

オチのついでに、迷子になり涙を浮かべて立ち尽くす僕に、やさしく声をかけてくれた若いお姉さんのおかげで折れかけた僕の心が救われました。
叶うものならばもう一度お会いしてあのときのお礼がしたいです。

北島 寿典